心ない母親その末路 (2)

東北で大きな地震が起こり、大きな津波が押し寄せてきたとき、私たち夫婦は、夫の仕事の都合で東北に住んでいました。住んでいた家は無事だったものの、食器などの家財道具の大半が壊れました。 ...

母からは、電話１本かかってきませんでした。

私の方から電話をすると、母は、「無事だったのね」と言いました。ひどく冷めた声で。

「そっちは大丈夫？」私が聞きました。そこから母は、東京の方にも、大きな揺れがあったこと。父や妹が、電車が止まって、会社に泊まらなくてはいけなくなったこと。一晩中、母が心配したこと。それを熱く私に語り続けました。

聞いていて疲れてきてしまった私は、言いました。「ウチはね、食器とか全部割れちゃって。家の中、グチャグチャだ。家具の下敷きにならず、命があってよかったと思ってる」。

母は言いました。「あなたはいいわよ！　家にいたんでしょ。食器は、買えばいいじゃない」。母はひたすら、ひと晩、家族の帰りを心配した自分のことを話し続けました。

涙がこぼれました。母があまりにも冷たくて。心無くて。

心無いことを言う人だ、とは思っていたけれど、それは言うだけで、いざというときには、私の味方になってくれる人なんだと信じてた。でも違いました。「心無いことを言う人」ではなく、「心無い人」でした。

日本中が、人との「絆」を再認識したあの時、私は悟りました。私と母との間には、「絆」などないんだと。私と母との関係は、あの日、完全に終わりました。

心ない母親 その末路 (2)